夜(或いは希望或いは絶望)
永乃ゆち
飛び立った鳥の行方を捜してる 夜に焦がれて夜に怯えて
いつだって夜は味方じゃなかったし別れの電話も覚悟してたし
アイドルと政治家が並ぶ深夜枠誰も嘘つき誰も正直
真夜中のテレショップでは腹筋の割れるマシンが誘惑してる
忍び足教えてくれた年上の男(ひと)を待っては五度目の流星
風船に針刺すような優しさを残してくれた夜は真緑
描きかけのカンバスの中の小宇宙夜明け前には星を飲み込む
水の抜けたプールサイドで話してた言葉は夜に溶かしてしまえ
涙さえ夜の前では無機質で恋してたって今更気付く
友達のはずだった君 空メール 無意味に夜を蹴飛ばしていた
さよならを言うのは私のはずだった 初めて故郷の夜に焦がれた
月よ今照らさないで 虫よ今声を聞かせて 私泣きたいの
あの夜は君に似ているテノールの少しかすれた声に抱かれた
文法も方程式も無視してたあの夜君は鳥になったね
母さんのハイヒールの音響いてた夜は私に優しくなかった