夢見る深海魚
ベンジャミン

ふかーい海の底へ飛び込んだら
途中で深海魚に出会いました

「深海魚さん、どこへ行くの?」
「なーに、わたしは夢を叶えに行くんだよ」

そう言って深海魚は浮上していきました

「深海魚さん、急に浮上したらいけないよ、死んでしまう」
「しかたないさ、夢を叶えるのは命がけなんだから」

深海魚はだんだんと膨らんでいきます

「深海魚さん、もういけない、お願いだからもぐっておくれ」
「どおってことないさ、見てくれ希望がこんなに膨らんでいる」

もう、ちょっとでもさわると破裂してしまいそうでした

「深海魚さん、僕は浮上したあとの結末を知っています 見ていられません」

深海魚は横についた目を少し細めました

「なら君は、自分が海の底にたどりついたらどうなるのかも、知っているのか?」
「えぇ 知っています 海の底にたどりついたら、僕は・・・」

僕がその先をもごもごしていると

「知っているならいい ほら! もうすぐ海面だ わたしの夢が叶う」

深海魚はそう言っていきおいよく水面に顔をだしました

「深海魚さん・・・」

僕が話し掛けても、深海魚はまるで聞こえていないふうで

「これが外の空気とゆうものか! わるくないじゃないか!
 わたしの夢は叶ったよ そして 君の命も・・・」

そこまで言うと、ぱんっ と、はれつしてしまいました
散らばった深海魚は、
星を映した水面に抱かれて、やがて静かに沈んでゆきました

僕は空を見上げて大きく息を吸いながら、深海魚の言葉を思い出しました

「夢を叶えるのは命がけなんだから・・・」

海岸に向かって泳ぐ僕を、まんまるの月が照らします
僕はそれを恥ずかしいと思いましたが、
ぽつんぽつんと光る街の明かりが、今までとは違うように見えたので

「命がけで叶える夢をさがそう・・・」

と、心の中で深海魚に約束したのでした



自由詩 夢見る深海魚 Copyright ベンジャミン 2004-12-15 04:29:31
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