ひかり めぐり Ⅲ
木立 悟





秒針に隠れ 見えなかったものが
少しずつ少しずつ見えてきて
たくさんのすがたかたちが
ひとつになろうとしている


窓の外を
泳ぐ熱
誰かの静かな
内臓の熱


隠す理由が無くなり
紙をしまう
狭い場所のにぎやかさと
においだけは隠しきれずに


曇は川と平行に吹き
嵐は道へ降りようとする
朝の光 仮装の光
こぼしつづける手のひらの樹


野を撲つ機械
音の無い機械
夕暮れと鉄
ひとつ つづけて


午後のように不明で
どこにでもあるもの
ひとりだけ見失い
径に横たわる


曲がり角から曲がり角へ
行方は行方に隠れてゆく
暗がりと鈴の音を
たがいちがいに重ね着しながら


水と眠りに名を呼ばれ
応えることなく目をそらす
名は夜に 風に 土に撒かれ
鉱のようにまたたいている


























自由詩 ひかり めぐり Ⅲ Copyright 木立 悟 2012-09-29 08:32:40
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