チャイム
はるな

まず目をとじる
つぎに手をひらく
そして想像してみる

捨てさることのできない
自分というもののなかに
ちいさく
しめってふるえている
自我を想像する
それを捨てる

目をとじる
手をひらく
つぎに
想像してみたもののすべてを
捨てる

しずかな時間がながれ
チャイムがなる
夕暮れに
合図の

あなたが帰ってくる
だれだかわからない
捨て去ったあとのわたしは
あなたがだれだかわからない

あなたが言う
目を閉じて
手をひらいて
想像してみてと
あなたが言う

わたしは想像する
あらゆるもの、
しめった自我を捨てるところを
想像している

そしてわたしの
ひらいた手に
あなたが指でふれる
圧倒的な実在は
軽々とわたしを越え
あらゆるものに届こうとする

あなたが言う
チャイムが終る
目をとじ
手をひらき
ふたたび目をひらいたとき
わたしはもう
あなたと
何度でも出会うことができる



自由詩 チャイム Copyright はるな 2012-09-28 20:32:06
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