金魚の命
夏美かをる

連れられて来て
放たれて

追いかけられて
追いかけられて

すくわれて

入れられ

揺すられ
揺すられて

閉じ込められ
名前を付けられ

見つめられ
見つめられ

そして翌朝には
埋められる―



「ペットショップで新しいのを買ってきて」
一粒の涙も乾かないうちに娘達が言う

「どうせまたすぐに死んでしまうよ」
旦那が言う

私は無言で
その慎ましい命を静かに護っていた花瓶を洗う


自由詩 金魚の命 Copyright 夏美かをる 2012-09-28 02:07:02
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