水中戯曲
ただのみきや


まるで舞台セットのよう
蛍光灯の光が融け込んで
透き通った 小さな庭園で
   
  水草ゆれて

   ふわりと
  
 紅金色の着物も褪せた
 年増女が二人
  よもやま話

   ぱくぱくと
  
     ぱくぱくと


       互いを理解し合わなくても
         わたしたちは楽しめる
         少しは理解できたなら
      もっと互いが好きになれる?
        たぶん無理よ その逆よ
         たくさん理解したなら
        あるいはそうなるかもね

         自分の境遇を嘆いたり
  行く末を憂いだりなんてもうたくさん
  食べて眠れるならそれで結構じゃない
         所詮人間に囲われた身
         働かざる者なんだから

      代わり映えのしないこの庭で
       ゆらりと踊ってみるけれど
      ゆるりと舞ってもみるけれど
        意味を問うことをやめて          
          考えることを止めて


        ぱくぱく

      ぱくぱくと


六年前の夏の日に
息子が掬った金魚が二匹
今夜も見開いた眼で眠りに就く
どんな夢を見るのだろうか
夢は迎えに来るのだろうか


自由詩 水中戯曲 Copyright ただのみきや 2012-09-27 22:59:28
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