新宿西口にて
馬野ミキ

昨日、病院の帰りに新宿西口に寄ったら
5時から自民党の総裁選の為の演説があるらしく
たくさんの警察官、たくさんの黒い服の男たち、候補者ののぼりが風にゆらめき物々しい雰囲気だった
俺はいつもの煙草を吸う場所が立入禁止になっていたので少しいらっとした
何人かの警官や黒いスーツの男と目が合う
たぶん俺が見ているからだろう
あわせて、坊主頭で上下作業着なので少しは怪しいかもしれない
愛国一人
という言葉が浮かんだ
三島由紀夫はどんな気持ちで市ヶ谷に行っただろう
東京モード学園は何を発信するか

行き交う人々
群衆と警官たち
拡声器の声だけが無機質に新宿に広がり
風景がぼやけていく
俺は一人で
心臓が高鳴ってる
俺はポケットにいまナイフを持っていて
これから総裁候補を刺しにいくのかもしれない
むしゃくしゃしてやった
意味不明な供述をしている
犯人は精神科通院中だった、と週刊誌に書かれるのかも知れない

おれはポケットを確かめる
ナイフは無い
そりゃそうだ。

俺は京王デパートのわきを抜け大江戸線へ向かった
後ろを歩いているやつに尾行されてる気分だ
でもね俺はただ、これから保育園に子どもを迎えにいくだけなんだよ



自由詩 新宿西口にて Copyright 馬野ミキ 2012-09-27 12:54:26
notebook Home 戻る