トルソー
そらの珊瑚

いつもそれは突然だった
その日のために まるで気配を消し去る魔法を操っているかのように

トルソーには腕も足も頭もない
それはきっと造形の芯

トルソーは不完全であることを堂々と嘆いている
それはきっと完全の芯

トルソーは赤い心臓を隠しもっている
それはきっと塑造の芯

一本のゆるやかに蛇行した川べりに沿って
突然現れた無数の曼珠沙華
黄泉の国にて
昨日までの時間を頭部製造に費やしていた
一切の枝も葉もない
複雑に絡み合った血管を剥き出しにして
高々とこうべを掲げ
一年に一度の約束を思い出させる

やっと逢えた
わたしのトルソー 
またの名は分身


自由詩 トルソー Copyright そらの珊瑚 2012-09-27 08:59:03
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