心が空いた
nonya


雨が降るたび遠ざかった
憎らしくて愛しいあなたの
後ろ姿はもう見えない

季節は容赦なく巡って
人は戸惑いながら巡って
届かない想いだけが残される

さらさらとした喪失感と
ひんやりとした安堵感が
長袖のシャツを透過する

百貨店のディスプレイに
やっと追いついた季節が
心の余白をつけ狙っている

言い訳めいた長文メールの
返信の温度が低すぎて
心が鳴った
外し忘れた風鈴のように

言いそびれた本音の泡を
独り言に変えていたら
心が空いた
情けないくらいペコペコに

満たしたい
あわよくば満たされたい
でも言葉はいらない

熱くてとびっきり苦い
コーヒーが欲しい




自由詩 心が空いた Copyright nonya 2012-09-26 19:41:10
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