うんこ
一 二
特別養護老人ホームで
夜勤のアルバイトをしている
夜勤明けに施設の門を潜ると
男子高校生が
度胸試しに
施設から出たゴミ袋
すなわち
うんこ山盛り袋にタッチしていた
元気な俺なら怒るだろうが
俺は怒る気力が無かった
彼らは
うんこは汚い
ということしか知らない
彼らは
うんこの始末を自分で
できなくなる日がくるかも
ということも知らない
うんこと向き合う仕事など
世の中には数える数しかない
されどうんこは
その人の
食生活
健康状態
腸の調子
を誰よりも
詳しく知っている
確かにうんこは汚い
俺だってオムツを換えるときは
ゴム手袋を二重にして付ける
されどうんこは
宝物
うんこが出ないと
人は死ぬ
介護職員は
利用者のうんこの
色
形
大きさ
臭い
出た時間
便秘の期間を
詳しく日誌に付ける
宝の記録だ
どんなに偉い人でも
どんなに美しい人でも
どんなに強い人でも
くっせぇうんこがでる
それは誰もが出すが
自分にしか出せない
くっせぇ宝物だ
その宝物を見せてくれるってことは
その人が家族のように
自分を信頼してくれている
利用者さん
今日も
臭くてドロドロの
宝物を見しとくれ
俺の肛門よ
でっかくて見事な一本グソを
今日もひり出しとくれ
うんこよ
今日も元気に出てこい