ダンサー
まーつん
雨粒を指先で弾くと
光が砕けた
それは夜を背景に
風の中に散っていった
相席した男がふかす
煙草の煙を呑むと
しなびた思いが伝わってきた
今のこの悲しさも
明日には忘れているのだろうか
生きていくことは 板塀のペンキ塗りに似ている
切り出した材木が見せる あるがままの木目を否定し
画一された色彩で塗りつぶしていく 違いはないのだと
あなたと私は 同じなのだと
そんなはずはないのに
スーツを脱ぎ捨て 裸になる
水たまりの中にくたくたとくずおれる ブランド物の布きれ
帰宅人達が行き来する 往来の真ん中で 万雷の拍手と嘲笑を浴びながら
そして 酒瓶の上で踊りだす…