野いちご
月乃助

 

鹿に小石をなげる

それを、食べてはいけないのです



野いちごに口を赤く染める おまえは
なにも知らず


動物の本能を ためされる
※線という 残忍な審判



紫蘇の葉も
茗荷の実も
栗さえも
ここでは、口にすることをゆるされず、
被爆の森は 黙したまま
生のいとなみを ささえる

人間の知恵は、驕りの果て
私もまた 心の灯火をためされる
小さくなったそれを
消してしまわぬように



いつか 時が来る



きまって
下弦の月の 美しい夜明け
私は、小さな森を生み落とす
黎明の 月明かりのした
足をひろげ よこたわる
期待のような 大いなるものを待ちわびながら

誘なみ  いざない   イザナミ

それは、ひとりの女
ふたりの 女
生まれたものは、次を生み
それは、あまたな 女たちの森つくり



死に行く森に 産声は確かな命のあかし
血のつながりにたよることなく
穢れのない
草木の子供たちが 生き始める




  森は、安らぎに子供たちを抱きしめた、
    






私のなかに住まう

 おんな神の 物語 
  その はじまり
















自由詩 野いちご Copyright 月乃助 2012-09-24 19:05:37
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