夏と私 Ⅲ
空丸ゆらぎ

  西瓜の種をどこに飛ばそうが、自由だった。
  あの頃は、どうでもよいことなど一つもなかった。

   電信柱が眩しく そそり立っていた。

     *

    下水処理場を通り過ぎ
    火葬場に並ぶ列を見て
    墓地で一服する
    清掃工場の煙突が空を指している

       水に流され
       灰になる

ふらふら飛んできた紙飛行機がシャボン玉と衝突し 散髪屋の青白赤のくるくるが螺旋を昇り続け 銭湯の煙突に三日月が座り 川辺のベンチで忘れられた携帯電話がなっている
物語は始まらない

 郵便ポストに陽があたり始め
 野菜ジュースの向こう側で 時刻表通り電車が走る

   日々に寝床はあっても
   帰る場所などない。

     *

 作者はもう寝てしまったことだろう
 裏庭で膝を抱える

    


自由詩 夏と私 Ⅲ Copyright 空丸ゆらぎ 2012-09-21 13:56:01
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