夏と私 Ⅲ
空丸ゆらぎ
西瓜の種をどこに飛ばそうが、自由だった。
あの頃は、どうでもよいことなど一つもなかった。
電信柱が眩しく そそり立っていた。
*
下水処理場を通り過ぎ
火葬場に並ぶ列を見て
墓地で一服する
清掃工場の煙突が空を指している
水に流され
灰になる
ふらふら飛んできた紙飛行機がシャボン玉と衝突し 散髪屋の青白赤のくるくるが螺旋を昇り続け 銭湯の煙突に三日月が座り 川辺のベンチで忘れられた携帯電話がなっている
物語は始まらない
郵便ポストに陽があたり始め
野菜ジュースの向こう側で 時刻表通り電車が走る
日々に寝床はあっても
帰る場所などない。
*
作者はもう寝てしまったことだろう
裏庭で膝を抱える