犬と鳥
……とある蛙
その道の先
途切れた先に海があり
海を覆って空がある
空のなかには窓があり
窓のなかには月がある
その月の先の暗闇に
えも言われぬ雨が降る
二つを分けた雨雲の
そのまた先に海がある
海の彼方に島があり
その島の中に道がある。
道の端には痩せ犬が
飼主のいない痩せ犬が
しっぽを下げて後ずさり
寒くもないのに震えている。
飼い主もいない痩せ犬は
人恋しくて道にいる
それでも怖くて近寄れず
人恋しくて淋しくて
犬は道の端にいる。
その道の先に鳥の群れ
黒い鴉が騒いでいる
何十羽もの凶悪な
目を持つ奴らが騒いでる。
一日の飯にありつけるのは
今では騒ぐ鴉だけ
犬はただ震えている
人恋しくて震えている。