ノクターン
マーブル
私に青が混じっているなら
何色でもいい
それは
荒れ狂う夜の海だったか
静かすぎる夜空だったか
それだけ
教えてくれよ
本当は水をよく含んでいたことくらい
あなたにもよく分かっていたんじゃない?
地球のMARBLEを
零しながら
鼻唄まじりの
穴の開いた月が
銀色のカッターでカチカチ遊んでいた
ジャングルジムのうえで
草臥れたマリアの写真を燃やしているのは誰だったんだろう
編みこんだ三つ編みはいたずらに夜の匂いがしみついて離れない
ロルカは萎れた花にも水をあげたし
サボテンは枯らしてばかりいたよ
かつては青臭い青葉の雨にしけった空気が渦巻いていたね
それから銀杏も噎せるくらい嗅いでみたよ
シャンプーはラベンダーで羽根が生えた気分で
その残り香がわざとらしく枕に添い寝していたけれど
透けてみえたのは
だらしなく垂れ流すスリーコード
オリオンが黙ったまま聞き流していた
そんな夜
あなたのジャムは林檎味だったかブルーベリーだったか
私はパンにはなにも塗らずに食べるのがわりと好きになった
ざらついて少し焦げたくらいの食感が好きになった
しつこい味にはうんざりした
冷めた紅茶が昔から好きなのは
単純に猫舌なだけで
珈琲はたまにはミルクだけは入れる
でも猫舌は直らないからほっといてほしい
傘をくるくるまわしながら虹を待っている
そんな日々を忘れなければいいってことくらい
私だって気づいている
だからすこし遠くで雷でも鳴らしててよ
私に青が混じっているなら
何色でもいい
それは
荒れ狂う夜の海だったか
静かすぎる夜空だったか
それだけ
教えてくれよ
本当は黒なんかが混じっているなんて
言われたくらいですこしつり目になるんだ
ラピスラズリ色のマニキュアを塗った夜にだって
悲鳴は鳴りやまない都会のサイレンの日々
化粧はしないまま
外にふらっとでてみたい日
こんなささくれた夜は
こんなささくれた夜は
海でも空でもいい
青が少しでも混じっていてくれるなら
気分が落ち着いたら
浴槽の水の雫を弾き飛ばしながら
水の鍵盤とやらを
ものうつげに
弾いてみる
滴るその水滴の温度をなめらかに記憶にすり込む
ノクターンだったか
それはシルクで出来ている
淑やかな眠りに誘う
浴槽からみえたひかりは
月ではなかった
丁寧におじぎをした夜の街灯だった
騙されたと思ったが
いがいにも綺麗だったこと
それだけが今日は
目にやきついて
離れようとしない