コンバース
板谷みきょう

学校が終わってからとか
授業をサボってとか
「やっちゃんの部屋」には
いつも集まってる奴らが居た

ブリティッシュロックとか
ウエストコーストとか
洋楽のアルバムを掛けながら
コーヒーを落としてくれて
カンパ缶が置いてあって
御代は幾らでも構わない
ちょっとした洋楽喫茶だった

夜中までエッチな話や
女の話や
将来の話や
音楽や小説や詩、映画の話や
それぞれが夢を
好きなだけ語ることができた

それは若しかしたら、僕らの
「トキワ荘」だったのかも知れない

夜中に突然
「チャリで走ろうぜ!」
誰かが言うと
皆でチャリに乗って
街中を徘徊した

奴らは今頃
何をして暮らしているのだろうか

あの頃、熱く語って
学校卒業したら
俺はドラマーになるって言ってた
トシカツは
「喜納昌吉&チャンプルーズ」で
ドラムを叩いてる

ボクは友達が居ないのを
自分は賢いからだと思っていたし
魚が心に住まないのは
清すぎるからだと信じていた

そうして
しがないフォークシンガーをして
老婆の着物をはぎ取り
足にしがみつく老婆を
蹴り倒して夜の闇に消えて行くように
唄っているのだ

そう云えば
後から気づいたけど
奴らのズックには
星のマークが付いていた

それがコンバースだと知ったのは
随分と
大人になってからのことだった


自由詩 コンバース Copyright 板谷みきょう 2012-09-19 04:41:48
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