やまぶどう
yo-yo
きょう
夕焼けをみていたら
いきなり空が
あかい舌をだした
空よりもずっと
遠いところ
飛行機にのって
バスにのって
橋も渡ったのに
ここは山ばかりなのね
と少女はいった
どこかの風の
いいにおいがした
はじめて聞く
めずらしい言葉と街の名前
ぼくが知らないことを知っている
だけど少女は
やまぶどうを知らなかった
すこし甘くて
すこし酸っぱい
山のけものになって
啄んだり吐きだしたり
口の中が
むらさき色になった
わらうとこわい
夕焼けに染まる
やまぶどうの秋は
つかのま
あかい舌を出してさよならする
橋の向こう
ちいさな鬼になって
少女は
帰っていった