こたえ こたえる
木立 悟
月と浪
聴こえない
遠く
月と浪
冬が冬に消える径
水を越える白
越えてくる白
ふたたび光るまで
ひとりは居る
ひとり以外
何もない径
水と青
あかない扉
いずれかの径と やがて交わる
死者が口にくわえる草から
名前だけが消えてゆくとき
足の爪が
夜を夜に刻むとき
いつ倒れてもおかしくないものがそびえ立ち
いつか誰も見なくなり
今は風さえよけてゆく
明るい夜が岩を昇り
夜ではないものを夜にしながら
飛べない花に手をさしのべる
水に落ちる番号が
落ちるたびに持ち上げる色
もう一度さかいめに出会う色
人と文字が話している
言葉はただ黙って見ている
応えは応えと手を結び
白のなかにたたずんでいる
骨が静かに
橋をわたる
虫と揺らぎ 聴こえない
水の光
白の群れが
白から飛び立ち
近づくことのできない標が残り
今も いつまでも 哭きつづけている