ラブソング
itaintme83

レンジに放り込んで3分待てば出来上がる
それは本物のような味がする
それは本物のように見える
しかしそれは本物ではない
君がよく知っているあのテレビドラマのように
それは本物ではない

それは君に語りかけるだろう
どれだけあの子が愛おしいか
どれだけあの子を殺してしまいたいか
しかしそれは本物ではない
君の銀行口座の残高のように
それはぼんやりとしている

それはハートの形をしている
それは美しくラッピングされて輝いている
しかしそれは本物ではない
3分間だけ君の言葉を代弁してくれる
素晴らしい代替品
でもそれが君の愛なのか?

目の前にいる子は本物なのに
君は本物の愛を伝えない
それは本物のような味がする
それは本物のように見える
けれどあの子には届きはしない
あの子はそれが偽物だと知っているから

偽の愛を噛み締めて君の心はどんどん膨張していく
この感情は本物なのに
この愛は本物なのに
それは届かない
破裂寸前の愛で君は窒息していく
朦朧とした意識の中に何を見る?

それは歪な形をしている
ラッピングすらされていない
偽物みたいな味がする
偽物みたいに見える
けれどもし君がその気ならば
あの子はそれを試してくれるだろう

それは噛み千切られる
それは蹴飛ばされる
焼かれ、切り刻まれ、あの子の心に傷を付ける
でもそれが君の愛
もし何かが足りないと気付いたら、あの子はそれを付け足してくれるだろう
その時初めて完成するのが君だけのラブソング


自由詩 ラブソング Copyright itaintme83 2012-09-17 18:30:28
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