たいせつな蜘蛛を殺した日
平井容子
ロック/
肉のなかにあるキッチンで
いちじくを割る
どちらがわにもいなくなる
感覚を否定した濡れ手を重ねて
象ったイーコール
それは合掌
あったことはいちどもなかった
ただ
ただ自由だった
/アンロック
首から上はただの空
低気圧の底を
つばめより早くかすめていく
雨が降りそうと
クリスタルがいう
物にやどる疲労はうつくしく
寝顔はかなしかった
永遠を泳いでいくように
在りもしない手足がまだ動いている
反射だけの世界が
揺らぎながら暮れていく
自由詩
たいせつな蜘蛛を殺した日
Copyright
平井容子
2012-09-17 18:25:03