素直
マーブル


隣ん家の白い猫が鳴いている
早朝五時に朝ごはんをねだって
起き抜けのご主人様の足元を
くるくると尻尾を巻き付けては
あのグレーの瞳で上目っ面気どっているのかもしれない
どうもその声に少しいらだったね
今のわたしにそっくりだったから
嫌気がさして
タバコに火をつけて
ぼんやり天井を見渡したくらい
それくらいだけ












案外難しいな
素直になるって
いつも飛んでいるから
もうすぐ二十八になるんだけど
あんたはその年
どんな生き方をしていたのよ
少なくともわたしには
ぶっ飛んでいるようにしかみえなかったんだけど
わたしが着地点についたら



もう本当にさよならだね













可笑しくて笑っちゃったような
泣いちゃったような孤独感に
今は襲われている
昨夜寝る前のビール四缶と
それほど食べたくなかったラーメンを食べて
もたれた胃でトイレに駆け込み
うずくまっているザマだったんだけど
昨日はどうかしてしまうくらい
あんたのことばかり頭で考えていた
そうだね
ちっぽけな脳たりんな頭で
花ばっかり
うんざりするほど綺麗に咲いていた











馬鹿が馬鹿に夢見たって
全部大事だったことは
忘れようとか思っていない
忘れたいものは
なにひとつないかもしれない








連れて行ってだとか
連れ去ってだとか
はやく迎えに来てだとか
うるさかったね
ごめんなさい
あんたの言う通り
バイバイブラックバードに
憧れて
浮かれたり
沈んだりを
繰り返してばかりだよ


泣けてくるな本当に









そうだ
あんまり泣く女は嫌いだったんだっけ








ちっとも直りそうにないよ










約束というショーケンが出演している映画
あんな風な冬の雪が吹雪いている景色を
あんたと一緒に電車のなかで見てみたいと思ってる
漢字を中ててみるだとかしてみたいと思っている




ごめん
でもやっぱり素直になるって難しいよ
緊張して頭のなかが飛んでしまうからさ
私がもしも着地点についたら?
分からないけど
たぶん電報鳩のように
あんたの元に
舞い戻って来てしまうかもね
なんちゃってな
今日は
愛想笑いも
苦笑いも
したくない
これだけは
素直に云える







自由詩 素直 Copyright マーブル 2012-09-17 06:58:43
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