いつかの秋川
木の若芽
「いつかの秋川」
木の若芽
なめらかな岩肌のすじをたどり
緑の水がゆっくりとゆっくり流れてゆくすじを見つめ
虫の鳴く草は生い
鳥の鳴く木々は色づき
わたしは座す場を見つけ
静かな静かな時が広がる
夢のしずくのように
絵に描けない美しい渓谷の面から
ついっと輝き落ちた と思うと
たちまちいのちの敏捷さあらわに
飛翔した小さな青水晶色
まさに鋭く糧を捕らえた一瞬
また静かな静かな時が広がる
水を深く望むと魚の影
谷の空をゆったりとかすめていくのは
まぎれもない白さぎ
きらきらしている身も心も
静かな静かな時が広がる
無という自然の中にいて
ただいるだけで
心自由
木と同化してゆく
わたしの心の自由な粒子たち
川と同化してゆく
わたしのいのちの自由な原子たち
あこがれ出てゆく