歌いつづければ
木の若芽

「歌いつづければ」
             木の若芽



台風が何事もなく過ぎた朝
日が昇り 一掃された世界に光がしみこむと
歌い出す いのちの声

「歌いつづけなさい
書きつづけなさい
詩いつづけなさい
詠みつづけなさい
声を出しつづけなさい
伝えつづけなさい
喜びと勇気をもって」

私はかつて草原の国の詩人だった
青々した草にパオをたて
たき火を燃やし歌った
言語を越え国境を越え人種を越えて
その歌はこの国にも伝わり響いた

あの草原を砂漠にする人類に向かって
歌い伝えつづけよう
人類であるわたし自身に向かって
歌い書きつづけよう

土と水があるところ 草は生まれ
草と水があるところ 土は生まれ
土と草があるところ 水は生まれる
いのちの声があがる

いのちの生まれ得ない空気におおわれた土地が
この地球上にできてしまっているのが事実なら
わたしはもっともっと声を大きくしなければならない

かつての草原の国に似た台地の丘
この国の弓なりの形のふくらみの頂
ここにいることを鮮やかに意識して

東へ東へ歌いつづければ
世界に届くことができる
ここからならば

一杯の水を差し出すように
一篇の詩を差し出そう
後から後から人が来ても
差し出す詩は尽きずにある

草が生える草が生える
地球のそこかしこに
世界のすみずみに

海原のように草原が広がりつづき
海原と草原がまじりあって
地球をつつみ世界をおおう
美しい星だと誰もが思う
そんな風光を眺める国の詩人だった

今もそうだという声がする
夢の中 心の中 宇宙の奥から



自由詩 歌いつづければ Copyright 木の若芽 2012-09-16 15:50:14
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