靄のなかの記念日
平井容子
満ちていったのは目が覚めるほどかすかなもの
心肺機能でふと知った気配から
あなたは学んだ
初期化された土嚢の丘で
それとなく聞きだした秘密は
もう眠ったのかもしれない
ときおりつま先のずるさに震えて
死後にまでつづいていく
抱き寄せたものの硬さとはなんだろう
傷がすべて
傷がすべて
枠の中にある家がある中にあるフラフープみたいな夢
吐いていく
わたしのどの分野にもいない教師が
女生徒の頬をたたくまで
皮膚には必ず穴があいていて
そのことを
些細なわたしはよくわかっている
疲弊した愛はかたつむりのつの
形と影がつかみあいながら
夜へのくのくと倒れていく