あがりたの森へ
初代ドリンク嬢

あがりたの森を目指した

自転車に乗って
とにかくまっすぐに進めば
そこには
あがりたの森があるはず
あがりたの森に何があるのか私は知らない
そこが何なのかも知らない

ただ、ふっと
「あがりたの森へ行かなければ」と思っただけ

その名前はどこかで聞いたことがある。
それが何だったのかは思い出せない

けれど、

私はあがりたの森へ向かっている

ただひたすらに

見慣れた
けれど、知らない町を
ただまっすぐに進んだ



進んだ先は行き止まりになっていて
こじんまりとしたドアがついた小さな家があった。
けれど、ここをまっすぐに行く以外に
あがりたの森への道はない

あがりたの森はそこにある

それは
私の中では確かなことだった。

ドアをたたいた



ドアを開けてくれたのは私の苦手な穏やかで賢いあの人だった
黙って
戸惑っている私に
高い澄んだ声で決まり文句のように言った

「この階段をまっすぐに行くの」

その人は
少し体をずらして
ドアの向こうを見せた
そこには先の見えない急な細い階段が
上に向かって続いていた。

「通れるの?」

「もちろん」

彼女はそれが日常の行為のように大きくドアを開いて
私を促した


私は自転車を肩に乗せて
階段を上り始めた

ああ、
あの人はあがりたの森を知っているんだ
ちょっとだけジェラシーを感じながらも

息も切れ切れに

「あがりたの森へ行かなくちゃ」

そこが何なのか
何があるのか
どこにあるのか
私は知らない



そこに何があるのか
あがりたの森が何なのか
私は知らない



自由詩 あがりたの森へ Copyright 初代ドリンク嬢 2012-09-15 13:08:32
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