サイボーグの秋
梅昆布茶
世界はやわらかにほほえむ
鋼の構築物は弾力の支点
ぼくたちの内骨格は紅色のスプリングで飾られて
秋の街を歩く
体の直線軸上で世界は右と左に分かれ
感覚器は集中制御室の周辺に配置され
排泄は後方に隠され
立体視された街はおだやかな午後に色づく
進化のターミネーターは
かつて競った生き物たちに別れをつげて
はるかな航続距離を歩みはじめる
ぼくたちは食事を楽しみ
食べる生物としての世界観を持ち
酸素を燃焼させて強靭なエネルギーを得る
そうぼくたちのからだは消化器と呼吸器と神経系とが
骨格におさまりよく配置された
地球ブランドのちょっと不出来なサイボーグ
抽象という魔法で
いつの日かほんとうの事を発掘しようとしている
無邪気な考古学者なのかもしれない
そろそろ細胞たちも
秋の支度をはじめるころだ