ファミレスの孤独
……とある蛙

昼下がりのファミレス

奥まったテーブル席
初老の婦人が
ぽつんと一人
一人 ナポリタンの遅い昼食

ゆっくりと彼女は
飲み放題のコーヒーを
啜る
そして 静かな店内に目をやる



騒がしい店内
駆け回る子供たち
若い家族連れがたくさん集う店内
子供たちの嬌声が響く

彼女の子供たちも走り回っていた。
それを叱る夫を
笑顔で眺めながらの食事
みんな嬉々としていた
ファミリーレストラン



ゆっくりと彼女は
飲み放題のコーヒーを啜る
彼女は目を閉じ
昔を思う



いつも帰り際
末の娘が 彼女を振り返り
振り返り こう言う

「また来ようね。絶対だよ
今度は大きなハンバーグ食べるんだ」

「そうねぇまた来ようね」



娘は半年前、妻となった

長男は結婚して
子が二人、地方都市に単身赴任で
孫は彼女のところに顔を出さない

子供たちを叱っていた夫は
一年前、定年退職し
そして、二人っきりになった最初の日曜日
このファミレスで食事した夫は
三ヶ月前 他界した。

また、彼女はコーヒーを啜る


この郊外のファミレスも
今月いっぱいで閉店する。




自由詩 ファミレスの孤独 Copyright ……とある蛙 2012-09-13 11:01:58
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