宇宙樹の秋
木の若芽

「宇宙樹の秋」
              木の若芽

やわらかな陽の入ってくる林の道
耳をすまそう
耳に手をそえて
鳥の声がひとつひとつ
きわだって聞こえてくる
高い声 低い声
陽気な声 のんびりした声
せっかちな声 甘い声
ひとつひとつの声がいのちのよろこびをうたいたくて
ああして

つやのあるくすの葉
かわらずにこんもり茂り
小鳥の隠れ家になっている
きっとたくさんの種類の鳥がこの一本のくすの大木の中
かくれんぼして呼び合っている
秋の陽の下
もういいかい チチッ
まあだだよ ヒュルル
もういいよ クイクイ ピョロピョロ

鳥は飛ぶとき光る
その歌声は踊る
木はあくまで静かにやさしく見守る
わたしは目をうるませてほほ笑む
このすべてが祈りになって宇宙へあふれ出てゆく

風景の一部になろう
宇宙をつくることに参加しよう

こがねのいちょうは
青空にさんさんと輝く
この色調はなんて澄んで神々しいことか
冬の前のいさぎよい高らかな宣言のよう
一年への感謝をたたえて

   ***

何年生きてきたか 何年生きるかより
今日小さな喜びを
明日小さな楽しみを
いくつか数えることができる
そういう生き方をしていきましょう
木を見て 今日が誕生日のだれかに贈ることばを
ふと思いついた





自由詩 宇宙樹の秋 Copyright 木の若芽 2012-09-09 15:58:28
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