自慰する男
花形新次

暗闇から
まだ誰も開けたことのない
部屋のドアを
ノックする音が聞こえる

それがすべての悲劇の始まりだった

枯葉のように積み重ねられた
プレイボーイやGORO、スコラ

どれひとつとっても
何の新鮮味もない
一人っきりの空間に

おまえはすっと
ぼんやりとした影を見せる

水沢アキが少し立った乳首を
誇らしげに両腕を掲げ
かわいなつみが
あどけない笑顔と痩せた身体に不釣合いの
乳房を川辺で露にするとき

寂しさをティッシュのなかに
振り絞る

VHSビデオやベータが欲しい
もはや二次元の世界では
この次から次へと押し寄せる性欲には
抗うことは出来ないのだ

凍てついた街では
小林ひとみという言葉が
救世主のように
誰彼となく囁かれていた
そんな季節

お母さん
あなたの息子の
自慰を見てください

あなたの息子が選んでいる
女性は
乳房の形が
あなたに似ているとは
思いませんか

「エマニュエルも青い体験も
フィニッシュには足りない」

ああマザーよ
あなたが見られたものは
僕のほんの少しの闇でしかないのですよ

何事もなかったかのように
ドアを閉める背に
ありがとうと呟いて
僕は深い眠りに落ちた


自由詩 自慰する男 Copyright 花形新次 2012-09-09 14:37:50
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