葉leaf


正装した男女が街並みを歩く
会社や官庁の欠落を埋める駒として
この森のように自然形成された街の中で
それぞれの大樹の中で代謝の手助けをしている
僕もその森にまでは入った
森の中をあちこちうろついた
陽射しが僕を溶かしてしまう前に
どこか庇ってくれる陰を求めて

「よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「当社を志望した動機は何ですか?」
これまで僕はこういうことをしてきて
こういうことを身につけて
こういうことをやりたい
と、これが社会常識だ
社会常識は僕の内側まで染め上げた
「あなたが人事の立場だったらあなたを採用すると思いますか?」

僕の知らない他人たちの巨大な自我の重さに
僕の自我も重さを増して対抗する
僕の知らない他人たちの共通常識を
ひとつひとつ摘み取っては食し
甘くても苦くても吸収し
何よりも僕の外観を磨き上げる

だけど今日は少し疲れた
こんな風邪をひいた日にも
風邪すら社会の味がするよ





自由詩Copyright 葉leaf 2012-09-09 10:03:18
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