ひかり めぐり
木立 悟





花は花に
はな はなと告げ
光は水に
背を向けていて

次に言うことを
いつも忘れて
壁をのぼる光の糸
どこからか 聞こえくる砂

景に重なる景や景
歩き進めば降りかかる
ある明るさ ある青空にしか見えない
浮かんでは消える水銀の柱



燃えひろがるもの燃えひろがるもの
何もできずに見つめていた
けだものの口の奥底に
暗いこがねの音は在った

訊いても訊いても
何も応えぬ花ばかり降り
何も削らず何も消さず
あちこちはみ出ながら積もりゆく

毒は毒に去り
色は色に失われ
こぼれ尽きて何もないもの
何もない手によみがえる



水が水に触れ むらさきとなり
抱くことも抱かれることもないものに降り
通りは昼に 午後になり
壁の後ろに朝を植えてゆく

ゆがみが集い
ゆがみ無きものとなり
鏡を捨て瞳を外し
夜の夜の前に立つ

息はめぐり
遅れたものを追い抜くことなく
分かれた姿を置いてゆく
見えない円の
外の外にまで



たどり着くため
花を曲がる
友の家は
常に変わる

空や星や樹の裂けめ
あふれるものから名はあふれ
背を向けるものの背を流れ落ち
抄うことのない手にしがみつく

粗い明るさのみなもとの
あちこちで罠が鳴り響き
捕らえられたものは無く
花ふらす曇の末裔は
空にむらさきを描いてゆく
































自由詩 ひかり めぐり Copyright 木立 悟 2012-09-07 19:56:11
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