うちのこ
テシノ

こっそりと私を
押入れに隠しました
母さんに見つからないよう
襖の裏にしゃがんでます

真っ暗い中
怖くはないけど
心臓がドキドキして
飛び出す機会をうかがって

期待をこめてそれでも
用心深く唐紙に穴を空け
襖の裏から向こうを見れば
母さんは子供と穏やかに笑っています

私の顔をしてました
私の顔をしてました

母さん母さん母さんは
一体何を作ったの?
私を産んでその次に
ほしかったものは何?

私の目玉が凝視する
あれが母さんの希求
私の脳裏に焼き付ける
母さんの望む形

母さんお腹が空きました
私はずっと隠れています
餓えて死んでもここにいます
そしたら気付いてくれるかな


(なんて汚らしい、と
母親がそれを燃えるゴミにする
そんな予感が浮かんでしまえば
子供は襖の裏から出られない
内なる子供はいつだって
知るのではなく感じることで
あなたと自分を理解する)


楽しそうに笑う子供が
怯えるように言いました
母さん怖い
押入れに怪物がいる

それで私はうちの中から
押入れごと消えたのです


自由詩 うちのこ Copyright テシノ 2012-09-06 13:33:20
notebook Home 戻る