高円寺で亀を買った
馬野ミキ

豊玉中まで子どもを送って
環八を南下
野方、高円寺、方南町、井の頭通りを左折して代々木へ
なんだ坂こんな坂ママチャリの旅
けど全然やせないな
腹がでっぷり
163cm 77kg



診察とデイケア
昨日か やっと耳鼻咽喉科に行った
咳が出すぎて呼吸困難になったりするから。
なんで一ヶ月咳が止まらないのに病院に行かなかったかを先生に言った
それはよくないと言われた
まあそりゃそうなんだが・・
ある知能とある知能の差が、例を見ないほど離れているそうだ
そう聞くと何だか少し誇らしいと思ってしまう
だから俺は馬鹿で救いがあるのかも知れない



午後は仲間たちとスコットランドヤードをで白熱
3時25分に捕まった
熱戦だったのでスタッフが時間をおまけしてくれた
先日行った、池袋でやってるオープンマイクに行こうかどうか考えていて
帰り道に
高円寺で亀を買って帰った
ゼニガメの子ども
自転車のかごで揺らしながら帰って大丈夫か心配でとろとろと運転



保育園で丸に見せたら喜んでいた
けど家に帰ったら扱い方がかなり雑で苛々した
子どもだから仕方ないというが
俺は子どもの時でも亀を落っことしたりしなかったと思う
なんか残念だ
でも仕方ないか



隠れるところと
泳げるところと
甲羅を干すところを作る
だんだん子どもそっちのけになる
なんてかわいいんだろう
心が一つしかない




飯を食ってるうちに亀が逃げた
ひえ
作ってやったトンネルに隠れているのかとおもいきや
嫁さんと捜索
丸はLEGOで遊んでる
くそったれ、使えないガキ
これならオープンマイクに行けばよかった



部屋の隅で
埃まみれのゼニガメを見つける
どうやって逃げたのか監視
彼の背の数倍もあるこの壁を乗り越えられる?
だめか
人が見てると動かない
人が見てなかったら飛ぶんじゃないだろうか亀は
甲羅をとったらつちのこっぽいしな
人が見ていると人間の重さで魔法が使えないというようなことはあるかも知れない



俺をみつめる亀
亀はなんて顔をしてるんだろう
まるで君は異星の住人のようだ
なにか俺に伝わらないことがあれば夢に出てくれと祈る




金魚すくいで金魚を獲りまくった時に買った虫かごに移し替えした
今日は枕元で亀を見ながら寝よう
リッチな時間が流れるな
丸は眠いのと親がかまってくれないので少し不機嫌
絵里も俺ももうずっと疲れている
けど、世界中の子どもたちの恵まれてるランキングをつけたとしたら丸くん
きみはだいぶん良い方だと思うよ



精神障害者用の雑誌の表紙モデルの写真を撮ってほしいと絵里に頼んだら
汚い部屋がばれるのはいやだっぽいオーラをかもしだしたので苛つき
実際に雑誌になる写真は別にとる
これは応募用だ、と言った
汚い部屋に旦那様を住まわせいおいて、それが外部に漏れるのがいやだという思考は
相当おれを馬鹿にしている
と俺は感じてしまう
でなけりゃ仮面夫婦だ




ファミリーマートにビールを買いに行ったら
入り口でアブラゼミがじたばたしていた
なんで虫は、灯が好きなんだろうな
ビールと発泡酒を買い、そのうちの一匹の油蝉を拾う
最後の体力で俺の指先を歩いている
死にかけの油蝉というのは、なんてかわいいんだろうか




指に乗せたまま自転車に乗り
家に帰る
死にかけなのに、俺の指に捕まっている力はまだあるんだな
こいつは土の中で七年、何を想っていただろう
どういう衝動の残りカスとその気力が
彼を動かすか?




半年前に
巣から落ちた死にかけの雀のひなを家に持って帰ってきたことを思い出した
ああ 死ぬということは
その傍にいることは
とても静かで こころが安らぐ



家に帰ってこの文章をいま書く
せみっちは少し飛んだこともあったが
いまは俺の右肩にいる
左の指から昇って俺の右肩に留まる というコースを二回たどったので
俺のそこがせみにとってちょうどいいんだろう



この蝉は今からしばらくしたら死ぬだろう
ちゃんとセックスして子孫は残せただろうか
きみが長らく真っ暗闇の世界にいた甲斐が、この世界にあっただろうか。


自由詩 高円寺で亀を買った Copyright 馬野ミキ 2012-09-06 00:52:17
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