尖閣諸島は我々のモノ、蒼井そらは世界のモノ
Ohatu


 中国人が、そんな許せないアピールを
 とあるサッカーの試合でしたという。
 何をバカな。

 蒼井そらは俺のモノだ。
 良く見ろ、ほら、彼女は僕の19インチの
 ブラウン管TVの中に住んでいるじゃないか。
 ここから一歩も、外には出ない。

 だいたい、そんなに薄い液晶テレビの中に
 人間が入れると思っているのか。
 良く考えれば分かるだろう。

 なに、そっちにもブラウン管TVが。
 確かに同じように、そらちゃんが見える。
 ぬぐぐぐぐ。

 どっちが本物か、はっきりさせねばなるまい。
 いや、これは意外に難しい。
 真実はひとつ、このTVの中で、僕だけに微笑みかけ
 すべてをさらけ出すそらちゃんこそ本物に違いない。
 違いないのだが、同じことをやつらも言ってくるに違いない。

 くそう、このままでは奴らが言うように
 そらちゃんは世界のモノになってしまう。
 それは嫌だ。僕だけのそらちゃんだ。
 
 ああ、奴らがあんなに厭らしい目でそらちゃんを。
 くそう、僕のそらちゃんを厭らしい目で見るな。 
 TVから3m下がれ。いや、もっとだ。
 日本人は近視なんだ。だから僕は近くで見る。
 お前らはダメだ、もっと離れろ。
 僕のそらちゃんに近づくな。

 あ、あ、しまった。
 興奮して、つい、ティッシュの準備が。
 くそ、間に合わないか。
 ああ、いっそ、そらちゃんに。いや、それはだめだ。
 そらちゃんが汚れてしまう。
 僕の大事なそらちゃんが。

 そんなとき、奴らのうちの一人が、僕に寄って来た。
 我明白你的心情。
 そう言うと、网吧のビラの入ったポケットティッシュを手渡した。
 そのときは、もう何も考えられずとにかくティッシュを出そうとした。
 片手でティッシュを出すのは、なかなかに難しい。
 そうするうちに、
 あ、

 ああ、

 間に合わなかった。
 恐れていた事態、そらちゃんに僕の不浄なザーメンが。
 そらちゃん、妊娠しちゃう。

 ティッシュをくれた奴は、俺を罵った。
 僕は必死で謝った。
 對不起。請?恕我的失誤。
 誰よりも自分の罪深さを感じていた僕は、ひたすらに謝った。
 奴に対してじゃない。
 そらちゃん、ごめんね。

 奴はやがて落ち着き、僕自身も落ち着いた。
 僕は一言、
 你給我紙巾、謝謝。
 それだけ言った。
 奴は少し笑ったように見えた。

 そして、その後考えた。

 だけど。

 だけど、やっぱりそらちゃんは俺のモノ。
 この真実だけは変わらない。

 そうだよね、そらちゃん。


注)ここで主人公が、蒼井そらと相手をしているAV男優について
  どう感じているかという疑問が湧く。彼はまさにプレイをしている
  わけで、中国人と所有権を主張しているどころでは無いのだ。
  実際のところ、主人公にも男優はもちろん見えている。しかし、
  そこには触れない。無いことにする。
  これと類似の逃避はある意味世の中の構図として、よくあることと
  言って良い。


 






 


  
















  




 








 






自由詩 尖閣諸島は我々のモノ、蒼井そらは世界のモノ Copyright Ohatu 2012-09-04 05:42:05
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