暗礁
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天井から集まる
星屑のめいめつが
頬からこぼれそびれて
睫毛にからまり
目を閉じると
角膜の表面に錨をおろし
浮標のように
ただ揺れている
覚束ない眩しさを
ひとつ摘んで
たやすくつぶし
ひしゃげたおとが
耳から鼻孔へ
すべりこむと
小匙ていどの
くしゃみが生まれ
さそわれるままに
あくびをしてしまった
ほの暗い口腔が開かれて
乳歯から順番に
明かりが点される
うわ唇がめくり上げられ
夜が頭巾のように
被せられる
赤裸々になった
のどちんこに
灯台が建設されて
置き去りにされたゆりかご
漫然と船を漕ぐ

アイロンをかける
母のそばにはいつも
天使がいて
幽霊が描く漫画の線のように
頼りない輪を描いていた
湿った繊維から
蒸気があがるたびに
軌道をそらし
畳に落ちそうで心配だった
また見てしまった
おそろしい夢 
回転木馬を模し
貴金属を装飾した
拷問器具に拘束され
あかくらげに触診される
けさ、起きると
乾燥した白い肌に
爪痕があかく
火傷のようにうかんでいて
毛布に身体を埋めても
土踏まずの下みたいに冷たい
母のくすりゆびに
嵌められた指輪は
あの拷問器具の
部品のひとつに似ている
だから手をつないで
海岸を歩いたとき
右手をつかむようにしていた
ふたりで灯台にのぼり
真昼の星座をつないだ
解体された、母の手が
星を真似て
さよなら、していた


自由詩 暗礁 Copyright sample 2012-09-03 12:40:30
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