水の時
月乃助



天蓋は燭光の水あかり
心をてらす 後后のゆらめき


ここは、光さえためされ 路にまどう
教室の窓外に 黒光りする鱗の群れが、
古代魚たちが、泳ぎすぎる」


ありふれた放課後/の時
子供たちは、だれも疑うことをしらず
受け入れてしまった 水の域


水の学校


腕の焼印は、押し付けられたタバコの跡
少年は、あいつらに払う金のあてもなくなった 日
絶望という孤独
水のなかで流す あたたかな涙のぬくもり


もう決められた心の先に、
アンモナイトをよけながら 屋上までの階段をのぼる
水に順化した少女たちが、
幸せそうにおりてくる 笑い声のやすらぎの波動が、
少しだけ少年の重荷を かるくする


陸に生きた頃の思い出が、よみがえる
水などなかった世界 


屋上から見あげれば、天空は
確かさをやどす 陸の世界からの誘い
水のなかでは、僕はもう生きていけない


屋上の柵をこえる
光を その美しく/清らかに射しこむ天にむかって 泳ぎはじめた
ひとかき ひとかき 力のがきり、
水に生きた 古生物たちが
陸をめざしたように
陸への 回帰に
胸をふくらませ・・・            その刹那


水が一瞬に消え去った
少年は、まっさかさまに落ちて行く
古代魚たちの 笑い声
あいつらの 嘲りの叫び




ちがう   ちがう   
   ちがう

             ちがう     ちくしょう ちくしょう      ちくし・・・




乾いたコンクリ‐トに 叩きつけられるにぶい音、



その 拉げた体から また 水が湧き出てくる
それは、すぐにあたりまえのように
学校をみたしてしまう






水の学校が、くり返される
悲しい 水の時 水の時代



















自由詩 水の時 Copyright 月乃助 2012-09-03 10:51:20
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