とある日(八)
信天翁

ゆく夏を惜しむ理由でもあるのか
  とぎれとぎれになってしまった
    ひねもす続いたアブラゼミの読経

くる秋を愛おしむ理由でもあるのか
  まぶしく映えて行き交うようになった
    蜻蛉の透き通ったシルエット

そして いま 遥かな昔 幼子だった頃
         電柱を陣地になぞらえ
親も夕食も忘れた 駆けっこをおもいだす

そうだ きっとそうだ
夢中ということはとても
          わびしいことだった

     


自由詩 とある日(八) Copyright 信天翁 2012-09-02 20:27:51
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