朝顔の顔
殿岡秀秋

青紫の花びらに
涙がひとつ
めしべの奥の
白い洞窟に
隠されているのは
新しいいのちが
育まれる仕組み

蜂がはいっていく
蟻が群をなしてはいっていく
ぼくもはいっていく
男は虫である
女は花である
嘘つきな男が
意地悪な女に
足をすべらせながら
しがみつく

ぼくは花粉まみれになりながら
きみに包まれる
そのとき
遠い空をたゆたっている
きみの表情を
見つめていると
ぼくの胸が弾んでくる
朝顔にはない
人間の顔だ



自由詩 朝顔の顔 Copyright 殿岡秀秋 2012-09-02 05:31:17
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