さいごの狙撃者
梅昆布茶
散らかった新聞紙やカップヌードルの食べ残しに紛れて
暗号が見え隠れするこの部屋で心の銃をみがく狙撃手
ぼくらは思想をもたないトラブルメーカー
いまさら乱数表でこの世界のキーワードがやりとりされるわけもないのだが
スパイだらけの世の中でぼくらは正統派のならずもの
酒を浴びるほど飲んでそのあとに新しい世界が待っていると思うほど
無邪気な悪漢ではもういられないのだがそれでも
割れたガラスのきらめきの真実を読み取ろうとするそのせつなせつなに
零れ落ちるきみたちの血を忘れたくないと思うのだ
自らを検閲する魂の狙撃手は
いまくもった眼鏡を磨き上げてかつて待っていたものの死骸を踏み越えながら
不穏な使命を全うするために窓をあける
そこから見えるのはいつもの雲と空だった
かなしいほどにいつもの空だったのだ
蔓延した地上の楽園は機械音をともなって
今日も回転を続けて時を破壊してゆく
撃てない狙撃手は今日も
見えない標的をさがしている
自分を狙撃手に産んだなつかしい匂いのする
それでもいつかは撃たねばならない
いとおしい混沌に向かって反逆する
最後の不穏分子であるために