たびたち
田園

たびたち



夢中になるものをみつけなさい

そう少年の母親は言い
銀貨を三枚とつくろった衣服を風呂敷に包み
少年を家から

ピシャリ

追い出した

少年はパニックになり
家の前で号泣した
二軒先のオヤジがうるせえと怒鳴った

泣くだけ泣いた少年は
「ママはもういないんだ」
「いるけれどそれはもうママじゃないんだ」とうっすら理解した

そしてとぼとぼと家だった暖かい場所から離れた

駅につき切符を買った
「僕は遠くにいかなくちゃならない」
「うんと遠い…そうだイーハトーヴに行こう」

行き先を決めた少年は切符をぎゅっと
誰にも盗まれないように
風に飛ばされないように握りしめた

少年は決意したのだ
少年は名もない旅人となった




さあ少年はどうなったろう
飢えて死んだか
無事イーハトーヴについたか
わたくしには分からない
少年の命はわたくしが語る程軽くないからだ

これは一人の少年の希望の話
そしてわたくしの懺悔の話



自由詩 たびたち Copyright 田園 2012-08-29 19:52:27
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