抱きあう動物
はるな


わたしがあなたの下着を干しているあいだ
あなたはわたしのために歌をうたっている

わたしがにんにくの皮を剥いているあいだ
あなたは二人分のコーヒーを落としている

わたしが玄関のタイルを磨いているあいだ
あなたはどこかで働いてお金を稼いでくる

あなたがどこかの知らない女を抱いているあいだ
あなたの知らない男がわたしに抱かれている

わたしがあなたのいない場所へ出かけているあいだ
わたしのいない場所であなたは息をしている

あなたが帰ってきた一日の終わりに
わたしとあなたからは違う匂いがしている

わたしたちが抱き合って眠っているあいだ
わたしたちは世界のどこにも存在しない

夜が
ただしく白んでゆくなかで
抱きあう動物からは似たような匂いが漂ってくる



自由詩 抱きあう動物 Copyright はるな 2012-08-28 16:07:29
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