朝の声
木の若芽
朝は不思議なことがいろいろわかる時です
昼間 木は木なのですが
朝 木は宇宙だと感じるように
でも夜はまったくわからない謎の時です
いったいわたしが木なのか 木がわたしなのか
***
熱帯夜の翌朝
新しい初めての未知が今から始まる
いまだに世界中を知らない
だから小さな一つ一つに気づいていきたい
一本一本の木の形がくっきりと見える
あんなに一本一本が安らかにそれぞれの形を
空に浮かび上がらせ刻みこんでいる
雲のすじに 森の木が重なり
遠くが近く聞こえ 近くが遠く見えたら
自分がどれくらいの大きさなのかわからなくなる
でもそれはとても幸せなこと
たとえば草の露に星を見え
木のざわめきに海を聞くように
あの鳥の声は
明るい朝日のさす屋根のてっぺんで鳴いている
なんてそれにふさわしい鳴き方だろう
人のわたしにもそうとわかる
あの鳥の声は朝の歌だと
その時刻々を
それに最もふさわしく歌う鳥の天性を
ひとしずく心にしみこませるか
影を焼きつけるか
香りを移すか
一枝挿し植えるかするように
分けてもらえないだろうか
***
この鳥の声を体が記憶します
喜ぶことを望まれている朝
安らぐことを望まれている夕に思い出すように