つくつくぼうし
yo-yo

逃げていくキラキラ
水際から雲の先っちょまで
白い捕虫網をもって追いかけた
ぼくの夏やすみ
めくるめく透きとおった羽から羽
声から声の甲高い呪文に
ぼくは敗けてばかり


シュクダイ シュクダイ
セミが急き立てるので焦っている
ぼくの夏休み日記
河原のオリンピックが忙しかった
棒高跳びに三段跳び
砲丸投げに蛙泳ぎと犬かき競泳
飛び込みで頭を切った
赤い血のメダルはそれだけ
ノートは透明 どこまでも青空
オシマイ オシマイ


シュクシュクと シュクシュクと
その言葉の意味は知らない
ヨーヨーおじさんは黙々と草むしりをする
爪も指もみどり色
ときどき草の匂いを嗅いでいる
それがおじさんの癖
セミの死骸をいっぱい空に放ったが
おじさんの夏は終わらない


ツヅク ツヅク
セミは死んでも鳴いている
それがヨーヨーおじさんの詩の世界
昨日と今日と明日
続いているが続かない
続かないものを続けようとする
指についた草の匂いが
今日もおじさんを悩ませている
草はやっぱり生き続けてるんだと


ツクヅク イッショウ
ヨーヨーおじさんと墓参りした
チワチワおばさんの一生
ドードーおじいさんの一生
おばあさんの愛犬ムクムクの石ころ
ヨーヨーおじさんが草むしりする
水をかけて墓石を洗う
どれも四角い
みんな一生
一行だけ日記の文句が浮かんだ


ぼくの彼女にも
透きとおった羽がある
彼女はぼくの天使だから
ぼくにはよく見える
彼女はときどき空に舞い上がる
ぼくは手を伸ばす
届かない
ツクヅク オシイ







自由詩 つくつくぼうし Copyright yo-yo 2012-08-25 06:21:15
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