その他大勢の中の孤独という事。
永乃ゆち
風邪をひいたと言う人の見舞いには行かない きっとまた迷うから
真昼間に蛇口から出た熱い水「お湯じゃなくてさ」と言う君が好き
放課後の少女は三つ編み解きつつ運命などを未だ夢見る
あの坂で告白しようと決めたから陽炎にさえ揺れないポプラ
なりたての彼氏と彼女に太陽は焦がれてコロナを熱く黒く
街に出て青く輝く人たちに魚のような口付けをする
桃色の髪した火星人などはテラの人とは合わないらしい
原色の海月の群れに遭遇し孤独を想う深夜のファミレス
高校生、だったあの頃本当は天動説を信じてました
空っぽのカンバス壁に打ち付けて無から生まれる芸術を説く
たくさんの絵の具で描いた自画像の終わりを黒で塗りつぶす夜
我先に青い光に群がって焼けて散りゆく蛾は私です
あの人はただそこに居るそれだけで食物連鎖の頂点に立つ
スカートの丈の長さがどうとかで纏められてく講堂の中
パイプ椅子の規則正しい直線美誰も気付かず講話は続く
川べりをきらきら流れてゆく蛍 豆電球も嫉妬している
アスファルトにしゃがみ込んではつま先の方向をただ確かめていた
髪の毛を指でくるくる巻いてる少女はみんな孤独な仲間
宇宙から便りが来ました今そこであの人海を造ってるって
制服が小さくなった頃すでに女になっていたのよ母さん