あの花束は
永乃ゆち



愛するほどに遠くなる

貴方は私をやさしく傷付けて

飛ぶ鳥は振り向かないからと言って

背中だけ向けて私の知らない世界へ歩き出す



あの花束は

もう枯れたでしょうね


貴方の為に祈りにも似た懺悔を

星に誓って嘘偽りのない想いを


あのレイトショーは

もう終わったでしょうね


月夜の庭で話したことは全部棄ててください

波打ち際で呟いた言葉は全部忘れてください


貴方の愛する人が私ではなく

他の誰かでもなく

貴方は貴方しか愛せないのだとしても

私は貴方しか愛せないのですから

生きて行く上でそうたいした問題でもないのです



あの貝殻は

もう鳴らないでしょうね


あの海辺へは

もう行かないでしょうね



貴方を見失う事なく生きて行く事が

私の目標であり喜びなのです

だから私は

深夜放送も終わったテレビのノイズを

子守唄にする時にも

確かに幸せなのです




あの花束は

もう枯れたでしょうね



あの口付けは

もう忘れたでしょうね


あの海辺へは

もう

もう二度と

行かないでしょうね







自由詩 あの花束は Copyright 永乃ゆち 2012-08-24 23:38:34
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