通り魔の論理
馬野ミキ

ルールは守らなくてもよい
暴力をふるってもよい
利益にならなくてよい


「それでは社会がなりたたないだろう!」


でも
いまの社会で俺は成り立ってないんだよ
と、マイクは言った
マイクはニュージャージー州の精神病棟に閉じ込められているキチガイなので
彼の意見は広く社会に尊重されなくても仕方ないのかもしれない
施設の近くに湖があり
水鳥が羽ばたくとき
マイクは目を閉じて嬉しそうにした

重度の精神障害者にとって、
国家とは何だろうか?
経済とは何だろうか?
愛国心とは何だろう?


きっと、
どうでもいいものであろう
まったく俺たちを助けてくれない
どうでもよいもの


人々がそれは重要で
大切にし
重んじなければならないと言う
どうでもよいもの。


そうしてマイクのような人間は世界中にいる


通り魔は
殺したにんげんの財布にいくら入っているかについて興味が無い
そういう人間は人類の敵である。




自由詩 通り魔の論理 Copyright 馬野ミキ 2012-08-24 12:45:58
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