ノート(冬とけだもの)
木立 悟
左目はいつのまにか
左目になった
今も
怪訝な顔をしている
花を折っても
花のまま笑む
悲しくて
誰も見なくなった
海が窓を切り
壁にしたたる
冬の機械が
響いている
棘の生えた季節の幾つか
踊りの輪のなか入れずに
暮れから夜への
壁を見つめる
水へ土へ差し出されても
水にも土にもなれぬままに来た
原の原の奥
雪を燃す火
ちがうものになるはずだった
やわらかなやわらかなものたち
ほんとうにここに
きてよかったのか
何処にも在らず在るものが
爪と爪をすり抜けてゆく
遠く空へ吼えるもの
夜のこがねを咬み砕く
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