雨上がりに
灘 修二
一晩中、激しい雨が降った。
雨は真っ暗な夜に
孤独な白い家の屋根をたたき続けた。
妹のミリアムは雨の子、言葉を失った子。
なにがそんなに悲しいのと聞いても
なにも答えない
理由がわからず泣きじゃくる
一晩中泣き止まず、雨の涙に顔をうずめて
また泣いた
わたしはミリアムの背中を一晩中さすってやり
この世の悲しみを分け合った
ほら、泣かないで
雨の音を聞いてごらん
どんなメロディが聞こえてくる?
そう尋ねたら、言葉を失ったミリアムは悲しみでゆがめた顔を
私の胸に沈めてまた泣いた
泣きはらした目をまた深紅に染めて
夜が更けていく
窓から白い光が差し、鳥のさえずりが朝を知らせた
わたしは目を醒ました
昨夜の驟雨は嘘だったかのよう
窓を開け、朝の空気を部屋一杯にとりこんだ
ミリアムは壁にかかった肖像画の中に入っていた
満面の笑顔をたたえて、昨夜のことは忘れたかのよう。
今日の朝のようにすがすがしいミリアムに挨拶を交し、
私はまだ始まったばかりの一日をもう幸福で満たして家を出ていく