不可逆
乱太郎
熱射を吐き出してしまった夏は
老いて死んでいく
鎮魂歌を捧げられながら
あれは一時のめまい
傾斜する意識が
さらに勢いを増して
海の底に沈もうとしている
戦場に散った無名戦士の夢が
自由を求めた旅人の夢が
神に誓いを立てた信仰者の夢が
燃えていた
僕の空洞な胸に
呼び掛け
巣を作ろうとしていた
灰が残った
夏が冷たく感じられ
死者は無口になる
秋が来る
沈黙の季節が
淋しげな夜空が僕を被う
自由詩
不可逆
Copyright
乱太郎
2012-08-21 15:47:16
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