たえまなく改行を続けているあいだ
草野春心



  夜が、
  たえまなく改行を続けているあいだ
  いくつかのケーキがゴミ箱に捨てられ
  何匹もの犬が鳴きながら焼き殺され
  きみの体に秘められた、すべての
  愛らしい軟骨は溶け



  あのコーヒーショップのウッドスピーカーはもう
  好きとか守るとか会いたいとか寂しいとか
  頑張れば届く程度の夢しか
  歌ってはくれないのにきみは
  雑踏のあいだのわずかなステッチを
  なぞって
  手を差し入れて、ひらいて
  赤く染まった生あったかい果実を
  掴みとろうとしているんだね




  歌えば、朝はくる!
  そう言ってきみはキャンキャン笑う
  一面、陰気なタイルのように僕が
  敷き詰めた目いっぱいのスペースキーの
  きみがスキップで駆けていった部分だけが
  橙色に発熱してゆく
  信じてもいいだろうか?
  歌えば、
  朝がくる。




自由詩 たえまなく改行を続けているあいだ Copyright 草野春心 2012-08-20 23:17:15
notebook Home 戻る